歴史を変えた帆船「ビクトリア号」と大航海

初めて世界周航をした帆船「ビクトリア号」

ビクトリア号は初めて世界周航をした帆船であり、世界史においてもとても重要な役割を果たした帆船です。

1519年にスペインのギプスコアで初めて浸水し、当時は探検だけではなく、交易と征服を目的とした航海も多くあった時代でした。

 

まさに時代は大航海時代、ヨーロッパ人によるアフリカ、アジア、アメリカ大陸への大規模な航海が行われ、スペインとポルトガルがメインとなっておりました。

サッカーではスペインがよく無敵艦隊と呼ばれていますが、大航海時代のスペインが由来となっているのでしょう。

マゼランと香料諸島

さて、ビクトリア号ですが、世界を変えた船になるわけです。

当時ポルトガルにて発見されたモルッカ諸島への新航路を開拓するべく、

ポルトガルの軍人であるマゼランによってビクトリア号は率いられ航海に出ました。

 

モルッカ諸島とはいわゆる香料諸島(スパイス諸島)であり、

とりわけ西洋で高価で取引されていた香辛料の生産地であったことから、

とにかく欧州各国はこの利権をどの国よりも早く確保したかったわけですね。

 

航海するのにも多額の資金が必要であり、とりわけ新航路の開拓、長距離航海は国の支援無くしてはできず、マゼランはもちろん母国であるポルトガルに援助を求めました。

しかしながらポルトガル王からは関心も金銭的援助も引き出すことができず、

結局ライバル国であるスペイン王から援助してもらうことになったのです。

そのスペイン王から5隻の船を援助してもらい、その中の一つがビクトリア号でした。

新世界での覇権争い

当時、ポルトガルとスペイン間では新世界における激しい覇権争いが繰り広げられてました。世界は欧州、アジア、アフリカの3つで構成されていると信じられていましたが、新大陸の発見に伴い、南北アメリカ大陸、オーストラリア大陸、その他太平洋諸島を新世界として、欧州各国がこぞって開拓を目指したのです。アニメのワンピースも着想はここから得ているはずでしょう。

 

そんな中、新世界におけるポルトガルとスペイン間でのお互いの利権を守るべくして結ばれた「トルデシリャス条約」があり、地図上に「デマルカシオン」という縦線を引き、右側(東側)がポルトガル領、左側(西側)がスペイン領として制定されていました。

かなり横暴な条約ですが、衝突が頻繁にあったので、「まあ、仲良くやりましょうや」的な要素が多分に含まれているのでしょう。

 

この条約により南北アメリカはスペイン、オーストラリア大陸はポルトガルという区分けになりました。またブラジルはすでにポルトガルが先に入り込んでいたこともあり、南北アメリカの中ではブラジルのみがポルトガル領です。

アルゼンチン=スペイン語、ブラジル=ポルトガル語になっている所以もそこから派生してきております。

マゼランの選択と歴史を変えた新発見

さてビクトリア号の話に戻りますが、スペイン王から支援をもらったマゼランはモルッカ諸島への新開拓に向け、スペインを出発するわけですが、「モルッカ諸島は西側?東側?どっち?」という選択に迫られるわけです。

 

先のトルデシリャス条約により西側スペイン、東側ポルトガルに分けられており、

その一方で、自分自身はポルトガル人、しかし支援してくれているのはスペイン国王(ポルトガル国王は拒否)と、いわばねじれが生じているわけですね。

 

そこでマゼランが選択したのは西側、まあまっとうな判断というか、支援してくれた国の領土を選択するのが普通だと思いますが、ここでまさかのポルトガル国王の逆鱗に触れ、海軍に命を狙われる始末でした。無関心で支援を断っておきながら、いざ利権が絡みそうになると口を出してくる、利権が絡むと面倒臭いのは昔も今も同じですね。

 

そんなこんなでマゼラン一行は南アメリカの南端に到着し、大西洋から太平洋へ抜ける狭い航路を発見し、それがかの有名な「マゼラン海峡」と命名されたのです。そして、ヨーロッパ人としては初めて太平洋を横断し、フィリピン諸島に辿りつきました。

太平洋の名付け親もマゼランであり、フィリピンの名前自体も実はスペイン国の皇太子であるフェリペにちなんでつけられた名称です。

 

このフィリピンの地でマゼランの人生は終わりを遂げます。

フィリピンの原住民の襲撃を受け、マゼランはスペインに戻ることなく、航海を終えました。しかしながらビクトリア号の航海はスペイン人のエルカーノによって引き継がれ、元々の狙いであったモルッカ諸島を開拓し、スペインに帰航することに成功したのです。

 

このビクトリア号の世界周航の間、毎日乗組員が日記をつけていましたが、

スペインに到着すると1日日付がずれていることに気づき、これが今日の日付変更線に繋がっております。また、世界周航により「地球は丸い」ということが初めて立証され、まさしく歴史を変えた船だと言えるでしょう。

船の軌跡と歴史の動き

少し話はずれますが、世界が丸く繋がっている=当時では世の中の常識を覆す出来事であり、先のトルデシリャス条約は地球が地図のような平になっており、左右が世界の終わりだということが前提で作られているため、特に東南アジアは欧州からすると世界の裏側となることから、どちらが右で左なのかが大きな衝突の種となりました。

 

それをおさめたのが「サラゴサ条約」であり、モルッカ諸島=ポルトガル領土、フィリピン諸島=スペイン領土と制定されたのです。

最近テレビにも出ているタレントの池田エライザさんはスペイン系フィリピン人を母親にもつ方であり、歴史の流れ、人の動きと合点することかと思いました。船の軌跡を追うことは歴史に繋がっていくと感じた次第です。

 

 

©︎2020 宮本快