
本日ご紹介するのは、海洋帆船画家・上田毅八郎による油彩画「ドルトレヒトの河景色」です。
舞台となったドルトレヒト(Dordrecht)は、オランダ・南ホラント州に位置する歴史ある港町。4つの大河が交わる要衝であり、古くからオランダやヨーロッパ諸国にとって重要な水路の拠点として発展してきました。
現在も数多くの船が行き交うドルトレヒトは、日本とも意外なつながりがあります。江戸時代、幕府の命により最新鋭の軍艦「開陽丸」が建造されたのが、このドルトレヒトの造船所でした。当時から高度な海洋技術を誇る都市だったことがうかがえます。
上田毅八郎の「ドルトレヒトの河景色」では、1618年建造の歴史的建造物「グロートホーフスポート(Groothoofdspoort)」前を、優雅な帆船がゆったりと通過する情景が描かれています。北のヴェネツィアとも称されるこの港町の水辺風景は、中世の面影とノスタルジックな雰囲気を見事に融合させ、鑑賞者を17世紀オランダの世界へと誘います。
上田毅八郎ならではの精緻な筆致と歴史的考証に裏打ちされた構図は、海洋美術ファンや帆船模型愛好家にも強く響く作品です。